1974年(昭和49年)8月31日から9月1日にかけて発生した多摩川の堤防決壊は、多くの人々にとって悪夢のような出来事でした。狛江市猪方地先の堤防が崩壊し、19戸の民家が濁流に呑み込まれたことで、堤防があっても油断できない現実を突きつけられました。水害から身を守るために危険性の認識と河川の状況を把握する方法を知っておくことは防災に取り組む上で重要です。
「おとなしい」「安全な」多摩川の堤防決壊
1974年(昭和49年)8月31日から9月1日にかけて 多摩川決壊
東京都狛江市猪方地先の堤防が決壊、19戸の民家が多摩川の激流に呑み込まれました。
出展 国土交通省 京浜河川事務所 多摩川決壊の碑
悪夢のような多摩川堤防決壊
昭和49年9月1日、「狛江市猪方地先の多摩川堤防が決壊」の一報がマスコミを通じて日本全国に伝えられました。
昭和49年9月1日、「狛江市猪方地先の多摩川堤防が決壊」の一報がマスコミを通じて日本全国に伝えられた。翌日未明、全国の人々が見守る中、被災状況がテレビの画面に映し出された。長年の蓄積が実り、やっとの思いで建設したマイホームが、それも建設したばかりのものが、瞬時にして次から次へと濁流の中に消えていく様子であった。「おとなしい」「安全な」川として、近郊の人々に親しまれてきた多摩川が突如として、その隠された牙をむいた。
出典 東京都狛江市ホームページ
濁流のすさまじさ
普段は「おとなしい」「安全な」河川も災害時は全く違う様相を呈することがあります。また河川の近くでなくても、水はすさまじい力で迫ってくる場合もあります。
家の底の土をさらっていった
前線による大雨(平成24年8月)
濁流のすさまじさにあ然~家の底の土をさらっていった~
(宇治市 70代 男性 地区役員)
私は地域の防災対策メンバーです。水に浸かったところの見回りをしている最中に、ひとり住まいの姉から携帯に「助けて!今、家の前に濁流が押し寄せてきてん」と悲鳴に似た声が飛び込んできました。
急いで車に乗って向かうと、道は濁流でおおわれ、とても車を運転できる状態ではありませんでしたので、車を放置して歩いて行きました。
私の姉の家はコの字のかたちに8軒並んだ通りのいちばん奥まったところにあります。家の中は床上浸水程度でしたが、高台にあるお寺の表参道からダーッと流れてきた濁流が、路地にダーンと集まったという感じ。2メートルほどのコンクリートの壁に囲まれていたために、行く手をはばまれた濁流が渦を巻いて家の底の土を全部持っていってしまい、家は建っているけど、土が何もないという状態になってしまったのです。隣のお宅にはウォーッと2階近くまで土砂が入り込んでいました。
高台にあるお寺の表参道から水が流れて来るなんて、誰も予想してなかった。だから、その地域の人のショックは大きかったと思います。
出典 内閣府防災情報のページ|一日前プロジェクト
台風や豪雨の時、河川や地域の状況を知っておくことは身を守るために大事です。
水害から身を守る
国土交通省では、台風や集中豪雨が多い春から秋にかけてを出水期として、洪水に対する備えを呼びかけていますが、大切なことは、一人ひとりが洪水の危険性を認識し、身を守る意識を持つことです。
出典 国土交通省|カワナビ
身近な川を調べることから始めよう!
家や学校にどのような危険があるかを知ったら、家から避難場所までの行き方や、その途中にある危ないところ、急いで逃げることができそうな高い建物がどこにあるかも、あわせて確認しておくと、水害のときにあわてずにすみます。
河川ライブカメラマップ
ライブカメラで川の様子を見ることもできます。近くの川の映像が見られるかを確認しておき、ライブ映像で雨量や水位をチェックして、もしも危ない! と感じたら、早めに避難するよう心がけてください。
まとめにかえて
災害への対応は早いことが肝要です。家の底の土が流される前に、行政からの発表やライブカメラ等で河川の状況を確認しておくことが大事です。
雨になったら「川の防災情報」
今夜の雨で、わが家は水に浸かるのか? → 「川の防災情報」を見ればわかります
洪水予報をはじめ、様々な情報が手に入るウェブサイト、それが国土交通省の「川の防災情報」(通称:カワボウ)です。vol.6でも紹介しましたが、平成28年3月にリニューアルされ、スマホ版が登場するなど大幅にパワーアップしました。トップページでは、雨がどの程度降っているかがわかるレーダ雨量と、洪水予報が出ている地域が一目でわかります。
出典 カワナビ