2007年の新潟県中越沖地震は、地震や津波、液状化、原子力発電所被災という多岐にわたる災害をもたらしました。 しかしながら以前の経験から得られる多くの教訓が十分に生かされていないのが実情です。 災害の遺構は、その教訓を次世代に伝える大切な手段となり得ます。
地震、津波、液状化、原子力発電所被災の発生
2007年(平成19年)7月16日 新潟県中越沖地震
マグニチュード6.8の新潟県中越沖地震が発生し、新潟県柏崎市、長野県飯綱町などで震度6強が観測されました。津波は柏崎市で高さ35cmが観測されています。
被害は柏崎市周辺に集中し、死者15人、負傷者2,346人、家屋損壊40,000棟以上の被害となりました。
原子力発電所の被災、液状化の災害
原子力発電所が地震によって被災する初めての例となり、東京電力柏崎刈羽原発では、火災や微量の放射性物質の漏洩の被害がありました。
また液状化の影響で住宅・宅地に甚大な被害が発生し、商業、製造業、農林水産業にも被害が発生し、「平成16年(2004年)新潟県中越地震」の被害からの復興途上であり、再び大きな災害を受けました。
参照 気象庁 新潟地方気象台
前回の経験、生かせず
平成19年新潟県中越沖地震(平成19年7月)
生きている間はもう来ないと思った
~前回の経験、生かせず~(柏崎市 50代 男性)
私個人としては、数年前の新潟県中越地震の経験はほとんど生きなかったということですね。あのときは、他の人は結構被害があったと言うんですが、うちの場合はちょっと不安定に棚の上に置いていた荷物が1個落ちたぐらいだったものですから。
うちのおやじなんかも、「この辺は地盤がいいから」と言うので、私も安心していたんです。それに、中越地震のような大きな地震は、もう自分が生きている間は来ないだろうなんて、変な自信がありましたね。
それが何年もしないうちにこんな大きな地震が来るなんて夢にも思いませんでした。
出典 内閣府防災情報のページ|一日前プロジェクト
一日前プロジェクト
「災害の一日前に戻れるとしたら、あなたは何をしますか」と、地震や水害などの被害に遭われた方々に問いかけました。 「タンスがあんなに簡単に倒れてくるなんて思わなかった。」というお話や、「家族と連絡が取れずとても不安だった。」というような体験談から、私たちは何かを学びとることができるでしょう。
出典 内閣府防災情報のページ|一日前プロジェクト
災害遺構とは
教訓を未来に伝える災害遺構
災害遺構とは、過去に災害で被害にあった人達が、その災害からの教訓を将来に残したいと意図して残された(保存活動が行われてきた)構築物、自然物、記録、活動、情報等です。例えば、岩手県宮古市では、昭和三陸地震の津波被害の教訓を刻んだ石碑が建てられていますが、この石碑より高い場所に住んでいた人は、東日本大震災の津波による建物被害を受けませんでした。
このように、過去の災害時に残された「災害遺構等」を通じて得られる教訓を次世代に受け継いでいくことは、災害被害を軽減する上で極めて重要です。
出典 TEAM防災ジャパン
まとめにかえて
災害は忘れた頃にやって来るとは限りません。また一度来たからもう当分来ないと安心していると、それは油断につながります。
例えばハザードマップを見て自分のいるところは大丈夫だと安心すると、災害が起きて時対応に手間取ってしまう場合があります。
災害はいつ来るか、どのような被害があるのかの予想することが難しいですが、過去にあった災害の経験や歴史を無駄にしないで有効に活用することも防災の備えとなります。
災害から学びを得ることは、次の災害に備えるための重要なステップです。過去の被災経験や災害遺構から得られる教訓は、新たな防災対策の礎となります。